5月5日は子供の日です。男の節句ともいわれています。この日は菖蒲湯に入り、菖蒲で兜を作りかぶって過ごした幼少期を思い出します。なぜ菖蒲で兜を作ったのだろうと疑問に思い、図書館で子供の日にまつわる書籍を借りて調べてみました。それぞれの書籍から抜粋し、文章をまとめてみました。
5月
「5月は一年のうちの大切な月とされ、田植えの月で田の神を祭る月です。1月、5月、9月は「斎月」と言われ忌む慎むべき月と呼んで、婚礼を避ける風習が残っています。中国でも古くから悪月と言って寝台や敷物を日にさらしたり、屋根の修理、建築などを避ける月です。また日本では五月忌と言い禁欲の時期とする信仰があります。田の神を迎える物忌みのため田植えをする若い女性が家に籠って心身を清める月とされ、それを「女の家」「女の日」といって5月4日の夜から5月5日まで女がいばれる日とも言われています。菖蒲湯にも女から入れる日です。軒に菖蒲とヨモギを飾り、菖蒲、ヨモギの芳香が邪気を祓うと言われています。現在も神奈川県相模原市津久井郡などにも古代の信仰行事として残っています。」
歳時記
- 『荊楚歳時記』楚の国→現在の湖北、湖南地方の年中行事を記した書
- 『燕京歳時記』清末期の北京の年中行事を記した書
- 『続斎諧記』中国六朝時代の文語志怪小説集。宋の東洋无疑の書
薬玉
5月5日に麝香、沈香、丁子など香料を玉にして綿の袋に入れて糸で飾り、造花に菖蒲やヨモギなどを添えてつけ、また時節の薬草や花を丸め五色(赤、青、白、黒、黄)の糸を長くたらして柱や御簾にかけて邪気除けをしていた。
端午の節供とは何か
端は「初め」という意味で月のはじめの午の日をいい、中国の王朝、漢代それ以後から5月5日をさして端午の節供というようになったと言われています。中国の『荊楚歳時記』によれば、端午には野外に出て薬草を摘み、草を闘わす野遊びをし、ヨモギを使った人形を門戸にかけ、薬玉を作って柱にかけ、ヨモギや彩(模様のある絹、5色の色どりのある織物)で虎の形を作って頭にのせています。また蘭を入れた湯で沐浴をし、菖蒲を浸した酒を飲むなどをして病気、災厄を祓う行事と書かれています。
日本では「江戸時代に五節供の一つとして、幕府の式日に定められ、武家社会に定着するとともに、民間にも広まっていった。」とされています。
鯉のぼりと鎧兜や五月人形はいつから?
江戸時代に端午の節供は武家社会に定着し、民間にも広まり大きな商家では武士に倣って豪華な武具の模造品を飾るようになりました。『俳諧歳時記』では、町人の子供のために武家の吹流しを真似た小さな紙の鯉を売り始めたとあり、関東では鯉のぼりをあげるようになったと『東都歳時記』に記されているとあります。
端午の節供に粽をつくる由来
端午の節供に粽を作り食べるようになったのは、『続斎諧記』に書かれている中国の楚の詩人屈原の故事からくるものです。屈原が5月5日に汨羅の江に投身自殺をしてしまった事を人々が悲しみ、命日に竹筒に米を入れて江に投げる供養をしたところ、ある日、屈原の霊があらわれ「米を龍に取られるので、竹筒ではなく、龍が嫌うチガヤの葉でくるんで五色の糸で縛ってほしい」と言ったといわれています。「龍=邪気」を寄せ付けないように「茅」で包んだ粽が作られ、端午の節供に食べられるようになりました。これが粽の始まりと言われています。
日本の端午の節句の粽はもち米や上新粉を練ったものを笹、茅、マコモ、ヨシなどで三角錐や三角形の形にして紐で巻いて包んで蒸して作りますが、各地方で包む植物や形、包み方がそれぞれ違います。
端午の節句と柏餅の由来
江戸時代から江戸を中心に柏餅が作り食べられるようになりました。柏の木は冬になっても葉が枯れずに、越冬して新芽を出すことから、後継ぎが絶えずに縁起が良いとされ縁起を担いだものです。江戸では上新粉の餅の中に餡を入れ柏の葉で包んだ柏餅が食べられましたが、西日本では男児の端午初節供には粽を食べ2年目からは柏餅をつくる習慣があります。
端午の節供と菖蒲湯の由来
菖蒲湯は室町時代から菖蒲を湯に入れて沐浴するようになりました。中国の古くからの風俗で5月5日蘭の葉を入れた湯に浸って邪気を祓う蘭湯とか沐蘭をしていました。日本では蘭湯は室町時代から菖蒲湯に相当し菖蒲湯の起源だといわれています。昔話や伝説に蛇の化身や樹木の霊と契った女性が菖蒲湯によって難を免れたという話があります。
まとめ
5月5日端午の節供は無病息災を願う行事です。粽や柏餅を神に供えて、厄払いの日でもあります。本来は忌み慎む月で婚礼を避けなければいけない月なのですが、そうとは知らず31年前、私たちは5月5日にキリスト教会で結婚式をあげました。現在まで離婚せず仲良く楽しく生活できているのは、逆に厄を祓っていただいて夫婦円満なのかもしれませんね。今年は粽の手作りで端午の節句を祈ってみてはいかがでしょうか?
【参考文献】
『日本年中行事辞典 角川小辞典―16』 角川文庫
『日本人の「食」その知恵としきたり』 会竜社 永山久夫監修
『日本の行事と四季のしつらい』 世界文化社 広田千悦子(日本の行事、歳時記研究科)
『日本の年中行事辞典』 吉川弘文官 福田アジオ 菊池健策 山崎祐子 常光 徹 福原敏男
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